根性戦記ラジカルアストラButlerS

序:自由待機プレイ ♯.5







 ルブール美術館は、主要幹線バイパスを経由すれば隊舎から眼と鼻の先にあった。管轄内でも近隣中の近隣である。
 職員用の駐車場に停車して下車。運転席から出て来たリーン・ロイド執務官は、ここまで乗って来た車を振り返って、意味深げな嘆息をする。助手席からよいしょっと出て来たフェベル・テーター一等陸士に、彼女は同情した。

「あの。この車は本当にフェベルさんの私用車ですか?」
「はい、私のです……」
「……我侭を承知で申し上げるのですが、次から別の車を用意して頂けませんか……?」
「私も出来れば別の車に乗りたいんですけど……第一分隊用の車輌が車検に入ってまして。代用車も、この前アストラさんが現場に無免許運転で突っ込んで壊しちゃったんです」
「……だからフェベルさんの車ですか」
「はい。これ取ろうとしたんですけど、ステッカーの付着に魔力素が使われててバンパーごと換えないと無理だって整備班の方々から言われたんです」
「何だよ。全部に付けるの自重したんだから感謝しろよな」

 屋根をバンバン叩いて、アストラ・ガレリアン准尉。あからさまに不満そうな顔の彼を、もっと不満そうな顔で女性二人が睨む。

「何が感謝ですか。私の車を無断で痛車にしておいて」
「これが噂の痛車なんですね。ちなみにこれは何と言う痛車なのですか?」
「クロノ先輩と限りなく同じ声で喋る普通校高等部の男子高校生が、望まぬ騒動に巻き込まれるアニメ。イラストは対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドだ」
「……その話、後で詳しくお聞かせ頂けますか?」
「お。何だよあんたもその口か。いいぜ。この前のエンドレスワルツはマジでストレスが有頂天になったもんだが、語るのはやぶさかじゃない」
『我がマスター。ワルツではなくエイトです。それでは羽根の付いたガンダムになります』

 意気投合──厳密に言えば違うのだが──するアストラとリーン。昼下がりなので食事に出ていた職員達が何やら声を潜めて側を通ってゆく。刺々しい視線にフェベルは身を益々小さくして耐える。アニメのイラストをバンパーに高らかと描いた車輌は、広告塔も同義である。見慣れない上に不審過ぎる。
 ついに耐え切れなくなったフェベルが二人の背中を押して職員用の昇降口に向かう。眼を細める守衛に身分証を提示。そこで守衛はようやく警戒を解いてくれた。陸士部隊や執務官の制服を着ていても、乗り付けた車輌があれでは無理からぬ反応である。
 裏口から通された館内は、ひんやりと冷たく澄んだ空気に満ちていた。水を打った静けさが、外の喧騒を忘れさせる。それでいて開放感に富むゆとりある広い空間だ。半開きで高い天井を見上げるアストラの前を、守衛がこちらへと先導する。

「アンスウェラー。一応諸々走査しとけ」
『yes master』

 リーンが先を行く。凛々しくすらりとした物腰。その動きの端々は、何となくフェイト・テスタロッサ・ハラオウンを思い出した。
 聡明な女性執務官の後を、フェベルが金魚の糞のようにとことことついて行く。打って変わって、ドン臭さが滲み出ている。曲がり角で何故かステーンと派手に転んで尻を床にぶつけた。

「どうして転ぶ要素の無いところで転べるんだ、お前は」

 手を貸すのが煩わしい──差し伸べようとしたら、リーンが振り返って苦笑しているのが見えてしまって気恥ずかしくなった──ので、足で尻を蹴飛ばすように立たせてやる。我ながら器用なものだと自画自賛。

「わ、私はデスクワーク派なんです! ……じゃなくて、もっと優しく助けて下さい」
「だったらロイドみたいに淑女になれ、淑女に。だったら再考してやる」
「ア、アストラさんは、リーンさんみたいな人が好みなんですか?」
「ああ? べ、別に好みとかねぇけど」
『その通りだ、フェベル。我がマスターの趣味は画面の中にある』

 主に代わって力説した待機形態のアンスウェラーを、アストラは光の速度で鷲掴みした。

「無責任な事言わないで頂けますでしょうか、相棒?」
『早く電脳化して広大なネットに飛び込みたいと毎日言っているではありませんか』
「世の中に不満があるなら自分を変えろ! それが嫌なら耳と眼を閉じ、口を噤んで孤独に暮らせ!」
『インテリジェントデバイスを已め、ストレージに成り下がれという事でしょうか。それでは我がマスターのパフォーマンスは百二十パーセント低下します。宜しければご命令を』
「つまり、自分を変えなきゃいけないのはアストラさんの方って事ですね」

 肩を竦めるフェベルの後頭部にアストラが拳骨を叩き込んだところで、リーンが急ぐよう促して来た。拳を蹴りに変えてフェベルの尻を再び蹴飛ばし、急ぎ足でリーンと守衛の背を追う。
 美術館の建物は、作りこそ古臭かった。近代の建築物とは落差があるが、導入されている警備システムは最新鋭且つ厳重のようだ。巧妙に設置されている監視カメラに死角は無く、館内で起こるすべての出来事が映像と音声で記録されている。

『何を警戒されているのですか? 美術館の警備システムはもう確認済みのはずですが?』

 リーンが思念通話の回線を開けて来る。アストラの目敏い館内チェックに気付いたらしい。

『んー。まぁ確かに部下共がチェックしてんだけどな。まぁ色々気になってよー』
『色々?』
『クイントさんが言ってた。確証を得るまではすべてを疑えってな』
『………』
『こーいう美術館は表沙汰に出来ない代物を一時保管しておく隠れ蓑にされてる場合が往々にしてあるもんだ。市営関係は特にな』
『ジュエルシードが行方不明になった時点でその線では洗っています。この施設の潔白は表明されていますが?』
『お、個別でやってんのか。なら、うちの隊員の捜査結果も含めてこの美術館は完璧白だな。けど』

 守衛に連れられた三人は事務所に着き、そこで待っていた美術館館長と対面した。小太りの中年男性だ。つるりと禿げ上がった前髪で額が見事に照明を反射し、空調が利いているのに脂汗が浮かんでいる。
 アストラは初対面だが、部下が上げて来た報告書で顔と名前は知っていた。
 挨拶や事情説明はフェベルに任せて、アストラはリーンとの密談を続ける。

『施設関係者や責任者が知らないところで、違法発掘されたロストロギアがこういうとこに横流しされて、色んな洗浄作業後、裏オークションに賭けられてたって事件が随分昔にあったんだ』
『クイント女史が存命の頃に担当された事件ですね』

 アンスウェラーが割り込む。クイント・ナカジマの部下として第一分隊のガードウィングを務めていた頃に直面した事件だった。

『ああ。そん時は下っ端の職員がどこぞの違法武装組織の構成員で、オークションで稼いだ金が組織の資金源になってたな。取り敢えず警備システムはこっち側でも抜き打ちチェックしといた方がいいぞ』
『なるほど、分かりました。では准尉にはチェックをお願い出来ますか?』

 二人の話が終わって間もなくフェベルの事情説明も終わり、館長と連れ立って館内全域を見回る事になった。無論、ジュエルシードが展示されていた場所にも寄る。
 幅が十メートルはあろう広い展示スペースのど真ん中に、シンプルな円形の展示用台座が設置されている。黄と黒のテープで封鎖処理がされている上に、強化硝子で保護されている肝心の展示用台座は空だった。

「ジュエルシードが無くなった時は」
「はい。以前お見えになられた方々にも申し上げましたが、忽然と、消えています」

 ハンカチでこめかみを流れる汗を拭きながら、館長。
 彼の答えは正しい。その映像記録はアストラの部下が確認済みだ。自分でもチェック作業をしようと思ったが、単調な風景画に等しい監視カメラの映像を早回しで確認する作業は苦行であり拷問に等しく、はじめて一分でアンスウェラーに押し付けている。
 古代遺失物ジュエルシードは、この専用展示台座から、一夜にして消えたのだ。誰も触れた痕跡は無く、荒された跡も無い。強化硝子には、耐衝撃、耐圧、耐魔の防犯基礎三種処理が施されている。レベルも高く、このセキュリティを突破するだけでもAAAクラスの、それもその筋に長けた魔導師が必要だ。それでもこの状況を作るのは不可能だと、映像分析を終えたアンスウェラーは呟いている。

「監視カメラの映像はもう引き上げてるが、今のところ異常無し。あんたやフェベルに見てもらえば何か分かるかもしんねぇけどな。……マジで消えたんだよ」
「それも含めて、ロストロギアですからね。高町教導官とフェイトの出逢いになったものですし、何が起こっても私は驚きません」
『記録上では、ここに展示されていたジュエルシードは高町教導官が最初に遭遇、封印したものです。シリアルは二十一。何かしらの憶測をするに足る要素があります』
「……アンスウェラー、でしたか。貴方は不思議なデバイスですね。心はあっても人工知能である貴方が、憶測という言葉を使いますか」
『先代に使役され続けていれば違っていたかと思いますが。我がマスターに手のかかる子供故、それに合わせて成長した結果でしょう』
「ベビーシッター・デバイスですか。これは画期的ですね。私もインテリ型にしようかしら。アームドに改修した元ストレージ型なので、些か不便なのです」
『なるほど。それは珍しい事例ですね。優れたデバイス・マイスターを知っております。僭越ながらご紹介致しましょうか?』
「はい。隊舎に戻りましたら是非」

 暴れ回るアストラを死に物狂いで羽交い絞めするフェベルの苦心を知らず、アンスウェラーとリーンは和やかなに談話を続けて、極めて気まずそうに顔を顰めていた館長が意を決して口火を切るまで、管理局局員とは思えない三名は騒いだ。



 ☆



「もー。アストラさんの所為で恥をかきました」
「そもそもの原因は相棒とロイドだろ!? 俺は正当な理由で暴れただけだ!」
「暴れるのに正当な理由も何も無いと思うんですけど」
「ある!」
「あ。そーですか。ちなみにあの館長さん、しっかりうちの隊の窓口にクレーム入れて来てますよ。おかげで現場に行き難くなっちゃったじゃないですか」
「嗚呼? 知ったこっちゃねぇよ。市民には捜査への協力義務があるから、そいつを思う存分振り回してバッターボックスに送ってやる」
「お一人で行って下さい」
「やだ。公共機関使うのめんどくせぇ。副官なら運転しろ、運転」
「大好きな特撮ヒーローを真似してバイクでも買って、それで行って下さい」
「俺、無免許」
「原付なら一日で取れます」
「原付ライダーはねぇだろ。龍騎のあれはいいと思うけど」
「なら頑張って自動二輪と特殊車輌免許を取得して下さい。マリエルさんが排気量千六百馬力の大型バイクのテスターを募集してましたから」
「それあれだろー。クロノ先輩が暴走事件の時に使った執務官用車輌の後継機だろ。別のメチャクチャ殺伐としたリリカル世界じゃランスターがフェイトとシグナム追っかけるのに乗ってたな。早く下巻書けよ」
「そうらしいですけど……別の殺伐としたリリカル世界って、何ですか?」
「とにかく、キャストオフしねぇから却下」
「押し付けられた資料だと、外装除去で高速巡航形態に変形出来るそうです」
「ちょっと教習所行って来るわ。俺の部屋のクローゼットにDXカブトゼクターあるから、用意しとけ。ガタックでもOK」
「駄目ですー。というか、一応監視カメラ映像のチェック中ですよ?」

 場所は前線第一分隊分隊長室。部隊長室のような上等な空間ではないそこに、アストラはフェベルと詰めていた。
 例の美術館から提供されていた監視カメラの映像チェックの為であるが、戻って来てから休憩を挟まずに単調なカメラ映像と睨めっこである。それを四時間も続けていれば、勤務態度が分隊長とは打って変わって非常に真面目で優秀との評価を頂戴しているフェベルでも、ダレてしまうのは仕方のなかった。

「相棒はまだ戻って来ねぇのかぁー」
「美術館にリーンさんと残って調べ物ですからね」
「だからさ、それがおかしいんだよ。アンスウェラーのマスターはどちら様?」

 ソファにだらしなく寝そべり、仮想ディスプレイを面倒臭そうに傍観するアストラ。
 同じソファで同じ作業に没頭していたフェベルの太腿にアストラの野暮ったい黒髪が触れる。こそばゆい感触に動悸が微かに荒くなった。下を向けば、機嫌を損ねたヤンキーの相貌でディスプレイ映像を睨む彼がいて。何故か自分が見られている気がして、怠惰な上司を咎めようという気が消し飛んだ。

「アストラさんです」

 極めて冷静を装い、咳払いを挟んで言ってやる。
 アストラ愛用のデバイスは、美術館を徹底して調査する為に残ったリーンの補佐官を務めていた。本来ならフェベルの役割だったのだが、リーンから丁重に断られている。
 疑問には感じなかった。何故なら、荒事になる可能性があるとリーンは暗に示していたから。だからこそデバイスであるアンスウェラーの方が都合が良いのだ。

「理屈は納得出来るが何かあったら俺丸腰なんですよ」
「アストラさんなら自慢の体力と腕力で何とかしちゃえますよ。それに、アンスウェラーさんが無くても幾つか魔法使えるようになってるんですよね?」
「インパクトとかアサルトとか、その辺りならなぁ」
「じゃ大丈夫です」

 相性問題も絡むものの、アストラはガジェットT型を徒手空拳で破壊出来る。V型は返り討ちに合うだろうが、その辺りのチンピラに毛が生えた程度の魔導師なら素手で充分なのだ。彼自身、チンピラに等しい性格だが。

「もしかしたら、このままアンスウェラーさん獲られちゃうかもしれませんね」

 軽口のつもりで言ってやると、思ったより硬い声で返事が来る。

「それはねぇな」
「何でですか?」
「何ででも。あいつは俺で、俺はあいつで。まぁ、そういうこった」

 不思議な言い回しだなぁと思う。
 でも、同時にそうかもしれないと吟味する。
 高町なのはと壮絶な私闘を繰り広げてから十年余り。人情人事に助けられてクイント・ナカジマの後任として陸士108部隊前線第一分隊分隊長に着任して二年少々。あの極限身体強化魔法を最大限に利用して、彼は突撃槍型インテリジェントデバイスという相棒を手に、暴れ続けている。
 互いに罵詈雑言を吐き散らしながら、絶妙なバランスで互いを高め合う二人を、フェベルはずっと側で見て来た訳で。アストラの抽象的な発言の意味も、それとなく察する事だって難しくない。
 だからこう思う気持ちが大きくなる。
 いいなぁと。アンスウェラーが、羨ましいなぁと。
 アストラの憎まれ口は、信頼の裏返し。自分だって辛辣な扱いを受けているので、同様の事が言えるけど。あの突撃槍型インテリジェントデバイスには、勝てない気がしてならない。
 アストラ・ガレリアンという人間の事なら、アンスウェラーよりも知っている自信があるのに。

「アストラさん。膝枕、してあげましょうか?」

 気が付けば、そんな提案を口走ってしまう嫉妬に駆られていた。

「だが断る」

 真顔で即答された。アストラに無駄に鍛えられた防弾硝子の心が傷付いた。

「や、やっぱり二次元の方がいいんですか?」
「違う」
「じ、じゃ、何でですか?」
「眠くなる」
「……どうして?」
「聞いてばっかじゃなくてちっとはその回転の速い頭で考えろ、クソガキ」

 忌々しげに吐き捨てたアストラは、尖らせた唇を閉ざして身を起こしてしまった。仮想ディスプレイの位置も戻して、ソファの肘掛に頬杖をつき、物凄く不機嫌そうにカメラ映像のチェックに没頭する。
 言われた通り、フェベルは近隣の陸士部隊から『脳味噌が二つある』と言わしめた回転速度を誇る頭脳を総動員して思慮に耽り。

「……き……気持ち良いですか、私の、膝」

 恐る恐る聞いた。だって、そういう事ではないのか。その発言を吟味する限り。
 一方でアストラは何も語らない。スナック菓子を摘む手を止めて、ディスプレイに投影されているカメラ映像に釘付けだ。

「む、無視しないで下さい。な……何だったら、今度のオフシフトの時、い、一日膝枕してあげても」

 にゅっと伸びて来た手に肩を捕まれて、有無を言わさず抱き寄せられた。
 岩のように硬い身体が、フェベルの体温を急上昇させる。冷静な思考がドリフトに失敗した車みたいに錯綜する。
 まさかいきなりか。でも色々と跳躍し過ぎではないか。だって自分達は、仕事では上司と部下で、プライベートでは親しい友達で、親友以上恋人未満な関係に過ぎないのだ。告白だってしていないし、されていない。キスだってまだなのに。その先なんてフェベルにとって前人未到の未開の地に等しい。

「で……で、でも、あすとらさんが、どうしてもって、いうなら」

 心の準備だって、殺人的速度で済ませよう。こういうのが先に来るというのも、あるものだ。例えばアストラが好んで読んでいるライトノベル『フルメタル・パニック!』の最新刊『つどうニック・オブ・タイム』のクルツ・ウェーバー曹長とメリッサ・マオ少尉のように。こんな局地的喩えでいいのか。脳裏をむっつり軍曹が『問題無い』と囁いてゆく。

「アストラさんとは、その、体格的に、凄く痛そうですけど、わ、私、アストラさんの所為でMっぽくされたので、が、頑張れると思います。で、ででででも! 優しく、して、下さい」

 けれども。フェベルが期待したような事態には、ならない。

「これ見ろ」

 アストラがディスプレイ画像の一角を指差した。緊張した声音に、フェベルの高まった動悸は収まってゆく。
 画像は一時停止をされている様子だった。右下の時刻表示は、午前三時過ぎを示している。資料では警備員の巡回がひと段落している頃合。同時にジュエルシードが消失する数秒前だ。
 ジュエルシードが展示されている専用台座に眼を遣る。異常は無い。床にも変化は無い。窓から射し込む月明かりで僅かに青白くなっているだけだ。
 アストラは、その何でもない映像の一箇所を指し示した。眼を細める。

「……翳?」

 光があれば翳が生まれる。月の光で青白くなっている床には、付近の展示物によって翳が作られている。無論展示スペースの中央に鎮座しているジュエルシード専用台座も床に翳を落としている。
 問題は、その翳が、人翳になってしまっている事。眼を細めて凝視しても分かるかどうかという、微かなものではある。洞察力が図抜けていなければ、まず見逃すだろうささやかな違和感。

「これ」
「六課のツンデレ凡人の得意魔法に近いもんだろ。器用さもあいつ並みだな。監視カメラの映像にまで細工しやがって」
「で、でもアンスウェラーさんがチェックした時には」
「これ二重に細工されてんだよ。チェックする側が機械だった場合に発動する欺瞞魔法。クイントさんが言ってた。信頼はしても依存はするなってな。だからこうやってクソ面倒なチェック作業してたんだよ」

 画像の一時停止が解除される。数秒後、ジュエルシードが消える。同時に、床に刻まれた歪な翳が消えた。翳の主が立ち去ったのかとうかは分からない。

「良く分かりましたね」
「それほどでもない。強化魔法で視力強化したからな」
「それで四時間ずっと見てたんですか!? もう、脳の負荷考えて下さい!」
「うるせぇな。これっきりだよ、頭痛くて吐きそうだ。それよりも美術館に行くぞ」

 ソファから立ち上がったアストラが、執務椅子に引っ掛けていた制服の上着を羽織る。

「リーンさんなら、その内戻って来るんじゃないですか?」
「違う。あの執務官、多分カメラの映像が細工されてんの気付いてた。生身の人間の眼と機械の眼、両方で判断する為にアンスウェラーを残したんだ」

 フェベルの上着も投げ渡す。しっかり受け止めきれず、フェベルは踏鞴を踏む。

「どこのどいつか知らねぇが、こういう芸当が出来るとなると、単独じゃヤバい。お前は先に車回しとけ。俺はオフィス行って部下共に指示出して来る」
「りょ、了解!」

 慌しくフェベルは隊長室を飛び出す。途中で滑って通路の床にダイブしながら、這うように急いだ。
 甘い雰囲気に後ろ髪を引かれつつ──。





 continues.





 以下パロディの出典元。

 □クロノ先輩と限りなく同じ声で喋る一般校高等部の男子高校生が、望まぬ騒動に巻き込まれるアニメ。
 ご存知、涼宮ハルヒの憂鬱の事。

 □対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド。
 涼宮ハルヒの憂鬱に登場するヒロインの一人、長門有希。

 □エンドレスエイト。
 涼宮ハルヒの憂鬱のアニメにて放送された『エンドレスエイト』というエピソードから。ループする夏休みから脱出しようと奮闘する主人公キョン達の話……なのだが、アニメでは殆ど同じ内容(厳密に言うと声優の演技やカット、キャラクターの服装や一部演出に差異がある)で八話もエンドレスしてしまい、様々な物議を呼んでしまった。

 □エンドレスワルツ。
 新機動戦記ガンダムWのOVAのサブタイトル。

 □羽根のついたガンダム。
 カトキハジメ氏がリファインしたウイングガンダムゼロ。天使の羽根を四枚背負った姿は当時視聴者の度肝を抜いた。

 □世の中に不満があるなら自分を変えろ! それが嫌なら耳と眼を閉じ、口を噤んで孤独に暮らせ!
 攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX第一話にて主人公草薙素子が取り押さえた犯人に告げた台詞。小難しく哲学めいた話である攻殻機動隊の冒頭に持って来るには非常にマッチしている。
 ちなみにこの時草薙素子が取り押さえた犯人の男性が首から、物語の中心人物になっている『笑い男』のマークを提げており、今後の内容を示唆していたりもする。

 □キャストオフ
 仮面ライダーカブトで、各ライダーがマスクドフォームからライダーフォームに変身する時に用いられる決め台詞。脱皮の英文。
 要はフルアーマー形態から本来の形状になる訳だが、現在ではオタク用語として若干定着しており、美少女フィギュアで一部パーツが外れる時に『キャストオフ可能!』等と謳い文句のように使われる。フィギュアショップではPOPにまで使われている。

 □カブトゼクター、ガタックゼクター
 仮面ライダーカブトに登場する、主役ライダーと準主役ライダーの変身アイテムの事。それぞれカブトムシとクワガタをモチーフにしている。

 □フルメタル・パニック
 富士見ファンタジア文庫から1998年より出版されているライトノベル。ロボットアクション、ラブコメ要素、その他諸々あらゆるエンターテイメント要素を兼ね揃えている傑作ラノベ。
 『2008年このライトノベルが凄い!』で一位に輝いた。ドラゴンマガジン連載一話目から追いかけていた人間としてあまりにも今更感があって微妙だった。
 クルツ・ウェーバー曹長とメリッサ・マオ少尉はメインキャラクター。むっつり軍曹とは主人公相良宗介を指す。




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